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2006年夏蝶ヶ岳(2) [登山]

前の記事からの続きです。

ハイマツからそっと頭を出して辺りの様子を伺って見ると、
風雨はどんどん強くなっていますし、他に登山者の姿もありません。
もう不安はピークに達してしまいました。

「おい、携帯で蝶ヶ岳ヒュッテに電話して、どうしたらいいか聞いて見ようぜ~」
私は相棒に声をかけました。
「今、携帯を使うと雷に当たりそうだから、嫌だ!」
と相棒。
「じゃ、俺がかけるから、携帯を貸してくれ」
と私。いや~、ウィルコムは山の稜線では使えないんですよね~。
とりあえず、104に電話して、蝶ヶ岳ヒュッテの電話番号を聞いて電話してみました。

「あの~、もしもし、今、蝶ヶ岳ヒュッテ手前の稜線にいるんですが、
ものすごい雷雨になっていて、ひとまず低いところに待機しているんですが、
どうするのが良いでしょう? 」

もう泣きそうな声で、話しかけました。

「あ~、そりゃもうじっとしていてください!金属類は、身から離して、
なるべく低いところでじっとしていてください!」

予想どおりの答えが帰ってきました。

「あの~相当寒いんですけど、今の雷雨がどれくらい続くか判りますか?」

再び泣きそうな声で聞いてみました。

「あ~、そうだな~、今こっちの松本市内も凄い雷雨だからね~
ちょっと暫くは止まないかもな~」

え?松本市内?
そうなんです、電話の先は、蝶ヶ岳ヒュッテではなくて、その経営母体のある
松本市内の事務所にかかった様です。

しかたないので、蝶ヶ岳ヒュッテの電話番号を教えてもらい、もう一度電話してみました。

「トゥルルル。。。。。」

出ません。。。

「トゥルルル。。。。。」

出ません。。。

「トゥルルル。。。。。」

全然、出ません!
わ~どないなっとんや~!

とりあえず、麓の松本市内も凄い雷雨だということは判ったぞ~
さて、どうする!
こんなに寒くなるんだったら、とっととヒュッテまで走りこむ様に
突き進んでおくべきだった~

と後悔しているうちに、どんどん風雨は強くなっています。
体もどんどん冷えています。

「おい、シュラフカバー持ってきてるだろ。とりあえず、寒いからシュラフカバーを
出して、それに入ろうぜ」
と私。
「ザックから、シュラフカバーを出しているときに、雷に打たれそうだ~」
と相棒。
かなり弱気になっています。

とりあえず、何か行動せねば、と思って、シュラフカバーを取り出して、
下半身をシュラフカバーに突っ込みました。
お!結構あったかい。

「おい、あったかいぞ!お前もシュラフカバーに入れよ!」

「いや、怖い」

というやりとりを交わしていると、なんと、こんな雷雨の中、おばちゃん二人組の
登山者が近づいてきます。

私達二人は、登山道をふさぐ様にして、ハイマツの下にもぐっていたものですから、
おばちゃんから見ると、単なる登山道をふさぐ障害物です。

「あらまあ、ビバーク中~?ちょっと、通れないから横を通して頂戴ね~」

と言って、何食わぬ顔をして、雷雨の中を突き進んで行きました。

「おい、あのおばちゃん、スゴイな~。雷平気なのかな~」
と私。
「こりゃ、俺らも行こうぜ!」
と相棒。
シュラフカバーが結構あったかいと判った私は、どうしようかな~と
悩んでおりますと、またまた別の登山者がやってきました。
今度は、オジサンたち数人です。

「いや~、今あっちで落雷があって、左足にビリビリ来たよ~。怖い怖い。
こんなところで待機してないで、小屋(蝶ヶ岳ヒュッテ)の方に早く行った方がいいよ!
どのみち、今日は小屋に泊まるんだろ?」

とオジサン達。
なんとも心強いお言葉ではありませんか。

その一言をもらって、私も相棒も立ち上がって、とにかく小屋の方に急いでつっきることに
しました。私はシュラフカバーを脱いでザックに突っ込むと、少し後から遅れる様にして
付いて行きました。痙攣ぎみの足も立ち上がって力を込めてみると、なんとか歩ける
感じです。

そして、立ち上がってみると、改めて周りは、ものすごい風雨と雷だと判ります。
怖いなんてもんじゃありません。生きた心地がしません。

あ~、こんなところで雷に打たれて死んでしまうのだろうか~
と弱気な事を考えながら、ひたすら小屋の方に突き進みました。

地図から考えると、おそらく、次に見えるちょっとしたピークを超えると
小屋が見える筈です。でも、問題はそのピークを超えて行かないと小屋には
たどり着けないという事です。

雷はピーク部分に落ちやすいので、そのピークを超えていく時が最も
雷に打たれる危険が高いだろうな~、あ~どうしよう、どうしよう。
でも、そこを超えないと小屋には着かないぞ~

ピークを避けて、横から回り込んだ方が良いかな~とも思いましたが、
悪天候ですし、登山道から外れるのは危険そうです。

相棒を含めて、周りの人たちはどんどんピークを超えて先に進んでいきます。
もう諦めて、まっすぐ行くしかありません。
え~い、どうにでもなれ~、と覚悟を決めて、ピークを超えていきました。

すると、ピークを超えたとたんに目の前に小屋が見えて来ました。
小屋は、ピークの向こう側で意外と近かったのです。

あ~、でもこういう安心した時に限って落雷にあたったりするんだよな~
とまた、少し弱気な考えになりながら、必死に小屋の方に足を進めました。

あと20m、あと10m、あと5m、3m、そして、ようやく、小屋の中へ
入ることができました。

あ~生きてる~
ヘナヘナヘナ。。。。

つづく。

※こういう状況でしたので、さすがに写真は一枚もありません。
 味気なくてすみません。
 実は、徳沢でもうひとつのルートを選択していたら、稜線に出たら
 直ぐに蝶ヶ岳ヒュッテでしたので、こんな怖い思いはしなくてすんだ筈
 なんですね~


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まめぞう

いやー恐ろしい!・・・(゜_゜i)タラー・・・
子供の頃読んだ本に、「山で悪天候に遭遇したら・・・体がぬれる→風で体温が奪われる→冷えると筋肉が痙攣する→歩けなくなる→一巻の終わり」 と書いてあったのを何だか妙に覚えているのですが・・・そのまんまの状況ですね。おまけにカミナリ!ピーク越えの部分は手に汗握る展開でした。とにかく無事で良かったですね。
しかしオジサン・オバサン連中は何で平気なんざましょ?^^;
by まめぞう (2006-08-23 04:13) 

miho-rin

ホント怖かったでしょうねぇ 
読んでる私でさえ 心臓がバクバク、いや ドクドクしながら
読みましたから… 
ホント ご無事で何よりです 
オジサン オバサンに会えたから 良かったのかもしれませんね
by miho-rin (2006-08-23 08:16) 

たいへー

熟練者は経験で分かるんですよ。 おれに雷は当たらないって。
・・・それか、もうどうでもいいと思ってるか、どっちかだと思う。
想像するだけで恐ろしい。 ご無事で何よりでした。
by たいへー (2006-08-23 08:18) 

nonkumi

いやいや、写真がなくても十分伝わりましたよ~。
でも、このようにして山の遭難は起きるのですね。無事か無事でないかは紙一重なのだと思いました。ご無事で何よりです。
さっき、NHKの朝の情報番組で上高地をやってました。大正池に靄がかかってきれいでした♪
by nonkumi (2006-08-23 09:29) 

poppychan-page1

まさに命がけですね!
写真どころではない、
雷の恐ろしさ、伝わってきました。
by poppychan-page1 (2006-08-23 11:22) 

Gamaoyabeeeen

おじちゃん、おばちゃんたちのヘーゼンぶりがおもしろすぎ。(笑)
いやいや、笑い事ではありませんでした。
山は怖いですねー。ほんっまにご無事でなによりでした!
by Gamaoyabeeeen (2006-08-24 00:11) 

元山陽ちとせ

>エルモさん、こんばんは。
体温を奪われて痙攣して動けなくなって、という流れ、
今回、まさにその通りになりそうでした。
もう歳なので、足の痙攣には十分注意しないといけないという
ことが良く分かりました。山では自分の足こそが全てですからね。
今回は今後の山登り人生の一つの転換点になるかも知れないです。
(んなオーバーな~)

>みほさん、こんばんは。
心臓ドクドクとは、そんなに怖かったですか~?
何か1枚写真があると、臨場感があって良かったのでしょうけど
下手な文章ばかりですみません。
でも無事で何よりは、その通りでした。ありがとうございます。

>たいへーさん、こんばんは。
雷の熟練者にはなりたくないですよね~
でも、今回のオジサン達は、結構なベテランの方々だったので、
後で色々と話しを聞くと、雷の鳴っている間隔から動いて良いか
どうかを判断しているそうです。今回は微妙なところだったらしい
ですが、雷が鳴って次の雷が鳴るまでの間というのは、そこそこ
安全な時間らしくて、その間を縫って急いで移動して、鳴りそうに
なったら隠れて、という具合に移動する方法もある、と話して
おられました。

>nomuさん、こんばんは。
いやいや、写真がないとイマイチつまらないですよね~
やはり、映像の力というのは大きいです。
でもこういう体験記の様なものを集めたサイトを作ると、
遭難防止の為にお役にたてるかも知れませんね。
大正池は、昔の感じとは随分変わった感じがします。
今も十分綺麗ですけど、修学旅行の時に見た大正池はもっと趣が
あったな~と思ってしまうのでした。

>流風さん、こんばんは。
まさに命がけとは、言われてみるとその通りかも知れませんね。
でもそういうときこそ、写真の一つでも撮る様な余裕がないと
助かるものも助からなくなってしまったりするんだろうな~
と思います。写真が1枚もないという現実、反省です!

>Runaさん、こんばんは。
お元気にされていますか?ナイスありがとうございます。

>がま親分さん、こんばんは。
最初のおばちゃんが、強烈ですよね。
あらまあ、ビバーク中~?の軽~い一言は、強烈でした。
それとも私達2人は、よっぽど怖がりなんですかねぇ。。。
でも、あのおばちゃんにパワーを貰った様なところもあるので、
感謝感謝です。
by 元山陽ちとせ (2006-08-24 21:44) 

hanamizuki

うわー、大変でしたね。お疲れ様でした。
呼んでいて、ハラハラどきどきしましたよ。いつ雷がきたら…と思って。
何より、ご無事で。ほんとに良かった。ほっ。
by hanamizuki (2006-08-24 23:45) 

michan

元山陽さん、こんばんは~★
文章だけで怖くなっています('-'*)コワイヨコワイヨ
でもご無事でよかった^^
安心しました^0^
by michan (2006-08-24 23:57) 

みど

ううううううううう。。登山したことないみどにとってもドキドキの文章でしたぁぁ。。。
続き、楽しみにしてますね!!
by みど (2006-08-25 02:22) 

moonrabbit

大変でしたね。無事で何よりです。
歩いて行ったオジサン、オバサンの跡を追って小屋に入ったら誰もいなかったなんて展開だったらどうしようなんて思ったりもしました。((;゚Д゚)ガクガクブルブル
by moonrabbit (2006-08-25 06:52) 

お散歩爺

いや~!その時の怖さわかります。
私も はい松の中にもぐりこんで雷をやり過ごした事があります。
by お散歩爺 (2006-08-25 18:01) 

Runa

あの 私の ブログの コメント欄に こちらの 元山陽さんの
お返事コメントが 載ってるんですけど 見てみて下さい。
何故 こうなったのか?? 不思議な 感じです。 
by Runa (2006-08-25 20:06) 

元山陽ちとせ

>hanamizukiさん、こんばんは。
写真が無いので文章だけでどうやってあの雷の怖さを表現しようかと
悩みましたので、ハラハラどきどき感が伝わった様でしたら、
幸いでございます~。まあ、こうして文章におこせるのも、無事に
帰ってきたからなので、感謝ですよね。

>michanこんばんは。
そうか! 逆に文章だけだと読む人の想像力をかきかてるので
怖い話なんかは文章だけの方が良いのかも知れませんね~
山の稜線での雷の状況、たっぷり想像して頂けましたでしょうか~(笑)

>みどさん、こんばんは。
みどさん、雷に逢うこともありますけど、登山は楽しいですよ~
綺麗は景色も見れますし、綺麗な写真も撮れますしね。
健康にもいいですし。是非一度、お試しください。

>moonrabbitさん、こんばんは。
いや実は、小屋に入ったら電気が全くついていなくて真っ暗だったん
ですよ~~、お~怖~。詳細は追って。

>旅爺さん、こんばんは。
そうでしたか、旅爺さんも同じ経験をされたことがありましたか~
ハイマツって、ちょうど人が隠れるくらいの隙間があったりするんで
すよね~。

>Runaさん、こんばんは。
ご連絡ありがとうございます。
確かにRunaさんのページに間違ってこのページのレスが入って
おりました。おそらく私の操作ミスと思います。早速削除
致しました。ご迷惑をおかけ致しましてスミマセンでしたm(_ _)m
by 元山陽ちとせ (2006-08-26 00:25) 

袋田の住職

それは、大変でした。この記事は出先で携帯で見ました。
画像が無いので、コメントも入れられる状態だったのですが、
立てこんでいて・・・、
こうなると、神様・仏様・運頼みですね!
でも、危機を脱出するのは自分の決断か!
by 袋田の住職 (2006-08-26 06:55) 

元山陽ちとせ

>袋田の住職さん、こんばんは。
いや本当に今回は、激しい風雨の中、決断を迫られているな~と思いました。
このまま待機していると、体が冷えてしまって、別の意味で危ないな~
と思っておりましたので。
あのとき、声をかけて頂いたおばちゃんとおじさん達に感謝です。
あ!自分達も充分におじさん達か~(笑)
by 元山陽ちとせ (2006-08-27 01:08) 

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